慶應受験記_4

年が明けた。

養成スクールを卒業する年、俺は俳優を将来の職業にすることを辞めていた。

理由は色々あるが、大きな理由は自分では解決できないものであり、かつ、他人には言いたくないので詳細は言わない。

ただ、本当にどうしようもなかった。

道をひとつ失った俺は、公認会計士を目指して簿記の勉強を始めた。

理由は単純で、試験さえ受かれば金を稼げると思ったから。

実家に帰省したときに会計士を目指していることを親父に話すと、知り合いの会計士の先生を紹介してくれた。
会計士の試験の話、仕事の話をいろいろ聞けると思い、俺はとても期待して先生の事務所に向かっていた。

「もっと広い視野をもって世の中を見なさい。大学に行ってみてはどうかな。」

おいおいおい、期待していたアドバイスとは全く違うぞ。

もっと背中を押してくれよ。

あなたと同じ職業を目指す若者がいるんだよ。

そう内心思っていたが、先生は自分が中央大学、慶應義塾大学に通ってどんな世界を見たのか、どんな人達と交流していたかを楽しそうに語りかける。

俺が大学? むりむり、勉強したことねぇよ。会計士のこと聞きづらいなぁ。

帰りの車の中、俺は思った。

「あまり役に立たなかったな、帰って簿記の勉強しよう。」

次の話

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